本ガイドでは、セオリー・オブ・チェンジ(Theory of Change, ToC)を用いて効果的なソーシャルビジネスの計画を立案する方法を解説します。
ソーシャルビジネスの成功には、明確な計画と体系的な戦略が不可欠であり、セオリー・オブ・チェンジは、事業の目的達成に向けた具体的な道筋を示す有効なツールです。
このガイドでは、セオリー・オブ・チェンジの基本概念と作成手順を詳しく解説します。
最終目標の設定から、中間アウトカムの設定、具体的な活動内容の検討まで、ステップごとに説明し、事業計画の透明性と一貫性を高める方法を紹介します。
さらに、実際の事業例を通じて、セオリー・オブ・チェンジの活用方法を具体的に示します。このガイドを通じて、効果的なソーシャルビジネスの設計と実行に必要な知識とスキルを身につけましょう!
そもそも、ソーシャルビジネスとは…
社会的課題を解決するためにビジネス手法を用いて取り組むものであり、 次の3つの要件を満たすこととしている。 ①社会性:社会的課題に取組むことを事業活動のミッションとすること。 ②事業性:①のミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めていくこと。 ③革新性:新たな社会的商品・サービスの開発や、それを提供するための仕組みの開発・活用を行うこと。また、その活動が社会に広がることを通して、 新たな社会的価値を創出すること。 ※引用:ソーシャルビジネス研究会/経済産業省
目次
用語
セオリー・オブ・チェンジとは?
セオリーオブチェンジの重要性
セオリーオブチェンジの作成方法
参考:セオリーオブチェンジの例
「地域の貧困削減プロジェクト」の例
「教育の質向上プロジェクト」の例
6. まとめ
1. 用語
セオリー・オブ・チェンジ(Theory of Change, ToC)
セオリー・オブ・チェンジは、目標を達成するためのプロセスやステップを体系的に整理・視覚化したフレームワークです。プロジェクトの進行や成果を効果的に評価・管理するために使われます。
サークル型ToC(Circular ToC)
サークル型ToCは、目標達成までのプロセスを円環状に示すセオリー・オブ・チェンジの一種です。各ステップが連続的に関連していることを強調し、全体の流れを直感的に理解しやすくします。本記事では特にこちらを重点的に解説していきます。
ステークホルダー(Stakeholder)
ステークホルダーとは、プロジェクトや事業に利害関係を持ち、直接的または間接的に影響を及ぼす個人や団体のことを指します。資金提供者、地域住民、政府機関などが含まれます
2. セオリー・オブ・チェンジとは?
セオリー・オブ・チェンジ(Theory of Change,以下: ToC)は、社会的な目標を達成するために必要なプロセスやステップを明確にする手法です。
特にソーシャルビジネスや非営利活動において、ToCは重要な役割を果たします。ToCは目標達成に至るまでの因果関係を視覚化し、プロジェクトの効果を最大化するための計画を策定します。
ToCにはいくつかのアプローチがありますが、ここではサークル型ToCを採用します。
サークル型ToCは、目標達成までのプロセスを円環状に示し、各ステップが連続的に関連していることを強調します。このアプローチにより、プロジェクトの各フェーズがどのように連携しているかを直感的に理解できます。
サイクル型 ToC は
社会課題が発生する因果関係を循環的に図式化したものである。 「社会課題がどのような負のサイクルから発生しているのかを分析し、正のサイクルにシステムごと変えていくフレームワーク」 ※引用:田辺, 大., & 内田, 浩史. (2022). 社会課題の可視化とセオリー・オブ・チェンジ. 国民経済雑誌
3. セオリー・オブ・チェンジの重要性
①長期目線の戦略策定
ToCは、プロジェクトの戦略的プランニングにおいて不可欠なツールです。
サークル型ToCは、各ステップが円環状に配置されるため、全体の流れを直感的に理解しやすくなります。
これにより、各活動がどのように最終目標に寄与するかを明確に把握できるため、特に創業期の起業家にとっては、長期目線で考えたときに、リソースをどこに投下するのが、より効果的なインパクトを生み出せるのかを判断する一つの基準になります。
②資金調達や外部コミュニケーション
ToCは、外部のステークホルダーや資金提供者に対してプロジェクトの目的や進行状況を効果的に説明するためのツールとしても重要です。「なぜ、その部分を自分達の会社がやるのか」といった、具体的な成果やインパクトを示すことで、プロジェクトの信頼性が向上し、資金調達が容易になります。
③内部コミュニケーションの強化
サークル型ToCは、プロジェクトチーム全体で共有されることで、メンバー間のコミュニケーションを円滑にし、協力体制を強化します。各メンバーが自分の役割や責任、そして、会社としてどこに向かっているのかを理解しやすくなり、プロジェクトの進行がスムーズになります。
また、ToCは、組織内部のトレーニングや教育のツールとしても利用できます。
新しいメンバーに対してプロジェクトの全体像や具体的な活動内容を説明し、ToCを共有することで、メンバー全員が同じ方向を向いて活動できるようになります。
4. セオリー・オブ・チェンジの作成方法
ToCを作成するためには、以下のステップを踏むことが一般的です。
①目標の設定
まず、最終的に達成したい目標を明確にします。
この目標は、社会的な変化やインパクトを具体的に表現する必要があります。
例えば、「地域の貧困率を10%削減する」といった具体的な目標を設定します。
②逆算思考
目標達成に至るまでのステップを逆算して考えます。
つまり、最終目標からスタートし、必要な中間アウトカム、アウトプット、活動、インプットを順番に特定します。
例えば、貧困削減の目標に向けて、以下のように設定します。
中間アウトカム:「職業訓練プログラムの修了率を80%にする」
アウトプット:「年間100人の職業訓練を実施する」
活動:「職業訓練コースの開発と実施」
インプット:「訓練用施設とトレーナーの確保」
※これらはロジックモデルの作成方法の記事にも掲載していますので、そちらも参考に作成してみてください。
③因果関係の整理
各ステップ間の因果関係を明確にし、それぞれの要素がどのように繋がっているかを示します。この過程で、仮説や前提条件も明示します。
例えば、「職業訓練プログラムを実施することで、訓練を受けた人々の就業率が向上し、それが貧困率の削減に寄与する」といった因果関係を整理します。
④可視化
最後に、整理した情報を図や表にまとめ、視覚的にわかりやすくします。
サークル型ToCでは、目標を中心に配置し、その周囲に中期アウトカム、アウトプット、活動、インプットを順次配置することで、全体のプロセスを直感的に理解できるようにします。これにより、プロジェクト全体の構造や流れが一目で把握できるようになります。
5. 参考:セオリー・オブ・チェンジの例
事例①「地域の貧困削減プロジェクト」
目標の設定
最終目標:地域の貧困率を10%削減する
逆算思考
中期アウトカム:職業訓練プログラムの修了率を80%にする。
アウトプット:年間100人の職業訓練を実施する。
活動:職業訓練コースの開発と実施。
インプット:訓練用施設とトレーナーの確保。
因果関係の整理
職業訓練プログラム実施→訓練を受けた人々の就業率が向上→それが貧困率の削減に寄与。
訓練を受けた人が就業→安定した収入→地域全体の経済状況が改善。
事例②「教育の質向上プロジェクト」
目標の設定
最終目標:地域の教育水準を向上させる。
逆算思考
中期アウトカム:学校の卒業率を95%にする。
アウトプット:毎年300人の生徒が学習支援プログラムに参加する。
活動:教師のトレーニングプログラム実施、学習支援プログラムの提供。
インプット:教育専門家の雇用、学習教材の配布、学習支援センター設立。
因果関係の整理
教師のトレーニングプログラム実施→教師の指導力が向上→生徒の学習成果が改善。→卒業率up。
教育の質が向上→地域全体の教育水準向上→長期的には地域の経済状況や社会的安定性向上
参考: 田辺, 大., & 内田, 浩史. (2022). 社会課題の可視化とセオリー・オブ・チェンジ. 国民経済雑誌 Beyond the Nexus. (n.d.). Theory of Change.
6. まとめ
セオリー・オブ・チェンジ(ToC)は、ソーシャルビジネスや非営利活動、その他ビジネスにおいて、目標達成に向けた道筋を明確にし、効果的な戦略プランニングと評価を行うための強力なツールです。
サークル型ToCを用いることで、プロジェクトの全体像を直感的に理解しやすくなり、コミュニケーションや資金調達、トレーニングにおいても有効に活用できます。
具体的な事例を通じて、ToCの作成方法や活用方法を理解し、これからのプロジェクトの参考にしてみてください!
セオリー・オブ・チェンジの具体的な事例を用いて、どのようにToCを作成し、実際のプロジェクトに活用できるかを学びました。これらの知識を基に、皆さんの活動がさらに効果的に進められることを願っています。
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